研究テーマ

光電子と発光X線光子の同時測定分光(XEPECS:XES & XPS coincidence spectroscopy)を用いた光電子スピンと発光X線光子偏光の量子もつれ形成理論

プロフィール

田中 遼

Email: su23179r@st.omu.ac.jp


学歴

2023.4 - 現在 大阪公立大学 工学研究科 電子物理学専攻 博士後期課程(量子物理学研究グループ 魚住研究室 https://www.omu.ac.jp/eng/pe9/

2023.3 大阪府立大学 工学研究科 電子・数物系専攻 博士前期課程 修了

2021.3 琉球大学 理学部 物質地球科学学科 物理系 卒業


職歴

2023.4 - 現在 大阪公立大学フェローシップ生 ~「マテリアルイノベーションを通した国際的博士人材育成」~

2024.6.3 - 2024.8.29 インターンシップ: 国立研究科学開発法人理化学研究所 放射光科学研究センター 理論支援チーム

研究内容

 X線分光法は強相関電子状態を研究するための強力な手法であり、私はその理論研究を行っている。X線分光では高いエネルギーを持つX線を物質に照射することで、内殻準位から電子をたたき出し光電子として放出させる。このとき、内殻準位に生じる正の電荷を持つ正孔が、物質内の原子位置に瞬間的に導入された局所的な試験電荷となって、強相関電子系の多様な価電子応答を誘起する。この変化の様子は、引き続いて起こるX線発光スペクトルに明瞭に刻み込まれる。すなわち、発光スペクトルには、強相関電子系の電子状態の緩和ダイナミクスの詳細が明瞭に反映される。近年、実験技術の進展によって、この発光スペクトルが高い分解能で測定されており、実験結果から緩和過程における量子効果を明らかにするために高度な理論解析手法の開発が必要となっている。

 この様な背景のもと、本研究では光電子とX線発光の同時測定分光XEPECSに着目する。これは、内殻励起に伴う超高速電子緩和過程において、干渉し合う複数の量子遷移経路を選別することができる唯一の分光法である。シグナル強度が低いことから、まだ実験は行われていないが、本研究では世界に先駆けて強相関物質に対する XEPECSの詳細な理論研究を行い、高度化を図る。

 さらに、強相関物質にXEPECSを適用した新しいタイプの量子もつれ発生が可能であると着想している。XEPECS過程では、強相関物質から内殻励起によって光電子とX線光子が同時に放出されるので、強相関物質の電子状態を反映した量子もつれが生じると考えた。本研究ではXEPECSにより光電子のスピンとX線光子の偏光の相関を生成・制御する方法を理論的に確立する。これは、今までにはないX線領域での全く新しい「量子もつれ分光法の提案」にもつながる。そのためには、電子相関効果と固体結晶特有の電子緩和過程を考慮した精密なXEPECSの理論手法の確立が不可欠であり、これが本研究の"柱"である。

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